岩井　昌悟（東洋大学教授）

 

１．書誌情報

　2020年３月にご退職された川崎ミチコ先生から、研究室の整理の際に『三國因緣釋迦一代傳記』なる本をありがたく頂戴した。私は先生と日頃、日本の仏伝についてお話しする機会があり、先生は以前から退職の際にはこの本を私に下さると約束してくださっていた。

　以下に、日本の古典籍に門外漢の私が、先生から頂戴した後にこの初見の本の書誌情報にどうやってアプローチしたか、その次第を書いてみよう。

　黄色い表紙の和綴じの四冊。一冊に二巻ずつ収められており、全八巻になる。一冊目の表紙を開くと見返しには先に示したタイトル（内題）の左右に「明治十七年七月出版」「京都書林四書堂梓」とある。

　また第四冊の巻末の刊記に「大日本佛學書籍調進所／京都府平民／法藏館　西村七兵衛／京都市下京區東六條中珠數屋町烏丸東、入二十人講町二十二番戸」とある。この時点ではまだ著者が分からない。

　つづいて序にあたる部分に「凡例挙要ハンレイキョヨウ」がある。以下に全文を引用しよう。以下引用に際し、漢字は通行の字体に改めた。また句読点や「・」を任意に付し、書名を『　』で括った。ただし返り点が使用されているところは書き下し、いわゆる宣命書きのような双行表記は単行表記に改めた。カタカナの「子」は「ネ」とし、「【注：当サイト上で使用できない、「｜」と「モ」を組み合わせた字。】」は「トモ」とし、「ヿ」は「コト」とし、「乄」は「シテ」とした。「玉フ」の「玉」と踊り字と清音濁音の区別はそのままとした。「述」と「術」などの混用、「衹園」を「袛園」とするなどの誤字が多々見られるがこれもママとする。「凡例挙要」についてのみ（　）内は通用しているタイトルである。

　　凡例挙要ハンレイキョヨウ

一．釈迦如来八相の次第シダイ、『三世因果イングワ経』（過去現在因果経）・『大善権センゴン経』（慧上菩薩問大善權経）・『普曜フヨウ経』・『瑞応ズイヲウ本起キ経』（太子瑞応本起経）等ノ説一準ジュンナラズ。況ヤ八相備具ビクナラズ。但シ師僧祐ソウイウシの『釈迦譜フ』・『法苑珠林ヲンジュリン』等ニ始終シジウ具足グソクセリトイヘトモ多説タセツニヨリテ一概ガイニ沙汰サタセズ。所以者ユヘン何イカントナレバ、経々ノ異説イセツ和合ワヱスベカラザレバナリ。其ノ外『智度チド論』（大智度論）・王勃ボツガ『如来成道記』等ニ是アリトイヘドモ、異義イギ決定ケツヂャウナラズ。是ニヨリテ初学ノモノ多岐ギニ迷フ。其ノマコトヲ取ルコトヲシラズ、若モシマコトヲシラザレバ還カエッテ疑ウタガフ。ウタガフトキハ謗ソシル。ソシルトキハ此ノ罪則チ陀獄ダゴクノ因トナル。仍ヨッテ今一途ヅニシタガフテ其ノ大略ヲシルスノミ。

　一、 凡ソ三世諸仏ノ出興コウ其ノ相サラニカハルコトナシ。『法華』ニ「如三世諸仏説法之儀式我今亦如是説無分別法」ト説トキタマヘル是レナリ。故ニ出世化導ケダウノ儀式皆ナ同キナリ。然リトイヘドモ少々ノ異説イセツ是レナキニアラズ。今ハ唯タヾ悉達シッタノ釈迦ニ約ヤクシテ八相次第ヲ列レツ釈ス。是レナヲ解了ゲレウシヤスカラシメンガタメナリ。

　一、 文字ニ梵字ボンジ漢カン字和ワ字ノカハリアリ。語音ニ梵語ボンゴ漢カン語和ワ語ノタガヒアリ。梵語ハ竺乾チクケンノ人ノタメ、漢語ハ漢土ノ人ノタメ、和語ハ倭国ワコクノ人ノタメナリ。皆ナ是レ其ノ国ノ風俗フウゾクニシタガフナリ。今マ本朝ノ人ノタメニス。故ニ梵字ヲ本モトトシ漢字ニウツシ、和字ワジヲ以テ其ノ意コヽロヲヤワラゲテ此篇ヲ作ス。

　一、 今マ和字ヲ以テ書シ和語ワゴヲ以テシメスコトハ必ズ博学多才ハクガクタサイノ人ノタメニアラズ。唯タヾネガフトコロハ浅学センガクノモノヽ見ヤスク在家ザイケノトモガラノアキラメヤスクシテ釈迦如来ハ三界ノ衆生ノタメニ大恩教主オンケウシュノホドヲシラシメテ仏道ヲ修行セシメンタメナリ。

　一、 如来ノ諸説幽微ユウミニシテサダカニアキラメガタキ事多オホシ。如何イカンガ凡慮ボンリョノ短解倉卒タンゲサウソツニサトシアキラメン故ニ、是レアラン処トコロヲバ残ノコシオキテシルサズ。後賢ゴケンノ知ル者ノヲ俟マツノミ。古人ノイハユル「疑ヒ有ルトキハ之ヲ闕カク」ト云前言ゼンゲンナヲ耳ミヽニアリ。後生コウセイオソルベキノイマシメニ任マカスルノミ。

　一、 如来一代ノ伝歴デンレキヲ記シルスニ大乗家ノ説アリ。小乗家ノ説アリ。例レイセバ涅槃ネハンノ説ナンドヲ小乗ニハ斉業サイゴフノ入滅メツト思ヒ、大乗ニハ斉縁サイエンノ入滅ト見ミル等ノ如シ。カクノゴトキノタガヒハナハダ多シ。今多クハ小乗家ノ説ヲ用テ糅アツメシルセリ。其ノ故ハ初心ショシンノモノニ解了ゲレウシヤスカラシメンタメナリ。然レドモ大乗教ノ説ヲワスレタルニハアラズ。故ニ少々大乗ノ意コヽロヲモ含フクミシルセルナリ。

　一、 如来一代ノ数説スセツヲトルニ多クハ五百ヲ以テス。謂ハク悉達太子誕生タンジャウノトキニ国中ノ釈氏、五百ノ男子ヲ生ズル等ノ種シュ々ノ五百ノ霊瑞レイズイアリ。彼コヽロニカタドレバナリ。今ハ八相成道ニ準ジュンジテ八軸ヂクニ釐ワカッテ巻マキヲトヽナフルナリ。

　本性寺昭儀坊釈了意謹誌

　以上が「凡例挙要ハンレイキョヨウ」全文であるが、その末尾によれば「本性寺昭儀坊釈了意」すなわち浅井了意（生年未詳─元禄４年１月１日〈1691年１月29日〉）の著作ということになる。　また第八巻の本文の末尾に跋として

　　天和癸亥（天和３年＝1683年）ノ季四月八日ニ筆ヲヲコシ貞享元暦（1684年）二月十五日ニ其功ヲ絶ヲハリヌ。偈ニ云

　　　　　釈迦如来真報土　清浄荘厳無勝是

　　　　　為度娑婆分化入　八相成道度衆生

　　　元禄五年仏誕生日

　釈迦一代伝記巻第八終

　とある。

　　「へえ～浅井了意の著作なのか、真宗大谷派の僧侶が仏伝なんか書いていたのか」としばらく思っていたが、さすがに門外漢の私でも、これはなんとなくあやしいと思って、専門家がなんと書かれているか確認してみたら、北条秀雄氏は『新修浅井了意』中で、諸典籍を「確実に了意の作と認められるもの」「大体了意の作と認められるもの」「了意の作と認め難きもの」「真偽未決のもの」の４種に分類し、享和元年の『合類書籍目録大全』に記載のある「釈迦一代鼓吹十　玄貞」を紹介して、『釈迦一代伝記鼓吹』を「真偽未決のもの」に分類され、「玄貞の著が了意に仮託せられたものであるまいかと思う」とされている^１。玄貞という名は初耳だったが、真宗仏光寺派の僧であるとのことである。

　そこで早稲田大学図書館の所蔵になる玄貞著とされる『善悪因果経亀鑑』を参照させていただいたが^２、確かに文体などがそっくりである。また日本古典籍総合目録データベース（国文学研究資料館）も『釈迦一代記鼓吹』を「玄貞編」としている^３。

　同データベースは洛陽書林の田中庄兵衛の出版になる元禄五年刊の『釈迦一代記鼓吹』（外題『三国因縁釈迦一代伝記鼓吹』、以下「元禄五年本」）の全十冊の画像データをアップしてくれている^４。こちらの刊記は、先に挙げた跋の末「元禄五年仏誕生日／釈迦一代伝記巻第八終」の下に「洛陽書林　田中庄兵衛」とあるのみである。全八巻が十冊になる理由は三巻と八巻が二分冊になっているからである。比較してみると、私の手元にあるもの（明治17年本）は、内容は等しいが、筆跡も割付も元禄五年本とは異り、確かに別の版である。

２．目次

　次に内容について概観するために全目次を紹介する。目次と本文中の上欄の見出しとは対応関係にあるが、少々異同がある。上欄の見出しでは「慧思」となっているのを、目次は「慧恩」と誤記していることなどから、得てして上欄の見出しの方が正確であるから、両方示して比較できるようにしたいところであるが、今は目次だけによった。ここでは（）内に本文中に多く割注で記載された典拠を示す。ただしこれについては気がついたもののみであるので遺漏はかなりあると思われる。いずれ万全を期したい。

　目次

　釈迦一代記巻一目次

　一、釈迦如来本迹ジャク二門ノ沙汰

　二、師子頬シシケフ王四王子ノ説

　三、釈迦ハ瞿曇氏姓クドンシシャウノ末裔マツヱイタルノ本縁（十二遊経ニ出タリ）

　四、大茅草ボウサウ王ノ因縁インエン（菩薩本行経ニ出タリ）

　五、甘蔗氏カンシャシ四王子ノ本縁（長阿含経ノ説ナリ、）

　六、釈迦前生善慧ゼンヱ仙人タル由来ユライ

　七、灯照トウセウ王ノ善政ゼンセイ

　八、普光フクワウ太子ノ誕生タンジャウ

　九、普光太子ノ出家発心ホッシン

　十、普光ノ成覚并ニ諸臣等出家発心

　十一、灯照トウセウ王普光仏ヲ請シャウシタマフ緣

　十二、善慧ノ五夢ム并ニ五百ノ外道ノ対論タイロン

　十三、善慧仙人普光仏ノ所ミモトニ往ユキ玉フ縁

　十四、善慧五莖キャウノ蓮華ヲ買カヒ仏ニ奉ル弁

　十五、善慧ト青衣シャウエ女ト夫妻フサイノ約ヤク縁

　十六、灯照王普光仏ヲ請シャウシ又善慧供華クケノ霊瑞レイズイ

　十七、普光如来善慧ヲ記莂キベツシ玉フ術ジュツ

　十八、普光仏二窮人グウニン記莂ノ術

　十九、普光仏善慧ノ五夢ムヲ円ユメアハセ玉フノ妙実メウジツ （已上釈迦如来本縁ノ義・三世因果経ノ意ナリ）

　二十、悉達シッタノ先生瓦師グワシタルノ物語モノガタリ（已上智度論第三ノ意ナリ）

　廿一、今ノ釈迦ノ先生広熾クワウシタルノ縁（又新婆沙論ニハ…）

　廿二、釈迦三祇劫供仏ギコフクブツノ事実ジジツ

　廿三、布施フセ波羅蜜尸毘シビ王ノ縁

　廿四、布施ノ相状サウジャウ（涅槃経ニ出タリ）

　廿五、持戒ノ相普明ノ本縁

　廿六、四無常ノ偈ゲ並ヒニ諸王ノ得忍トクニン

　廿七、守戒シュカイノ比丘上座ノ大難ナンヲ救スクフ（大荘厳経ニ出タリ）

　廿八、鵞珠ガシュ比丘ノ戒体

　廿九、忍辱ニンニクノ相忍辱仙人（此縁ハ大論ノ十四ニ出タリ。又天台輔行ニ見エタリ。新婆沙ニモ出タリ。小異アリ。）

　三十、伽吒鬼カダキノ悪念

　丗一、雁カリ亀ヲ銜フクミ去ルノ弁（五分律ニ出タリ）

　丗二、精進シャウジンノ相大施セ太子（已上大論ノ第四、第十六、天台三大部ノ本末等ノゴトシ。但シ小異アリ）

　丗三、釈迦弥勒ミロク同時発心ノ相（已上新婆沙論ニ見エタリ）

　丗四、度王ドワウ仏所化ノ二比丘（六度集経ニ見エタリ）

　丗五、禅定ゼンヂャウノ相尚闍梨シャウジャリノ縁（已上大論ノ第十七及輔行ニ見エタリ）

　丗六、蔵ザウ六亀キノ物ガタリ（法句経ニ見エタリ）

　丗七、般若ハンニャノ相劬賓クヒン大臣（已上大論第四・輔行等ニ見エタリ）

　丗八、般若十種シュノ利益リヤク

 

　釈迦一代記巻二目次

　一、一生補処フショノ名義ミャウギ并ニ都卒トソツノ内院ナイインノ説セツ

　二、一生補処ノ菩薩必カナラズ都卒ニ生ジ玉フ問答モンダフ

　三、菩薩下生ノ五事シノ観念クワンネン

　四、菩薩五衰スイノ示現ジゲン

　五、菩薩五種シュノ瑞相ズイサウ

　六、菩薩都卒トソツノ諸天ニ無常ムジャウヲ示シメシ玉フノ弁

　七、生天下天

　八、金団コンダン天子仏ケノ生所ヲ知ル術

　九、下天シ玉フ所以ショイヲ弁ズ

　十、処胎荘厳ショタイシャウゴンノ三説

　十一、入胎ニフタイノ形貌ギャウミャウ

　十二、入胎ノ所処ショショ

　十三、入胎の心念并ニ受胎ジュタイノ四相細釈サウサイシャク

　十四、入胎ノ時節ジセツノ霊瑞レイズイ

　十五、受入ジュニフの所因ショイン

　十六、化生ケシャウノ相サウ并ニ其ノ証ヲ出イダス

　十七、湿生シッシャウノ相サウ并ニ証ヲイダス

　十八、卵生ランシャウノ相サウ并ニ証ヲイダス

　十九、仏ケ胎生タイシャウヲ受ウケ玉フ要術ヨウシュツ（倶舎論クシャロンニツブサニアカセリ）

　二十、舎利シャリノ利益リヤク

　廿一、釈慧海シャクヱカイ舎利ノ益ヤクヲ得ウルノ縁

　廿二、玄賛舎利ゲンサンシャリニ依ヨッテ齆病安全ヲウビャウアンゼン【注：「安全」の字の下にルビ「イユル」】ノ術

　廿三、住胎ヂウタイノ説法セツホフ

　廿四、託胎タクタイノ相

　廿五、出シュッ胎ノ相

　廿六、摩耶嵐毘尼園遊観マヤランビニヲンユウクワンノ相サウ（普曜経フヨウキャウニ見エタリ）

　廿七、菩薩無憂樹下ムウジュゲノ誕生タンジャウ

　廿八、菩薩生相後位シャウサウゴヰヲ表ヘウスルノ術ジュツ（菩薩本行経ニ委悉イシツナリ）

　廿九、出胎シュッタイノ処ショ々異説イセツの弁

　三十、釈迦老子左右脇生ラウシサウケウシャウノ分別フンベツ（法琳ホフリン法師ノ弁正論ベンシャウロンノ中ニ此ノ義ヲ沙汰サタシテ云ク…、仙人玉録センニンギョクロクニヨルニ…礼記ライキ・論語ロンゴ等ニモ見エタリ）

　三十一、左右脇生サウケウシャウノ例レイ

　三十二、無憂樹下誕生ムウジュゲタンジャウノ相并ニ七歩ブノ表相ヘウサウ（大善根経ゼンゴンキャウ・華厳ケゴン経ノ意ハ…、三論ロンノ嘉祥師カシャウシ無量寿経ノ抄セウニハ…）

　三十三、十方七歩ブノ表相ヘウサウ

　三十四、菩薩生下シャウゲノ相

　三十五、菩薩出生ノトキ種シュ々ノ現瑞ゲンズイ（ツブサニハ因果経ニ見エタリ）

　三十六、六種震動シュシンドウ并二十八境界キャウガイ（長阿含チャウアゴンニヨルニ…）

　三十七、菩薩出生ノ時トキ諸臣ノ願望クワンマウ并ニ天神加護カゴ

　三十八、菩薩誕生タンジャウヲ浄飯王ジャウボンワウニ告ツグルノ述

 

　釈迦一代記巻三目次

　一、徳名トクミャウノ五因

　二、悉達シッダ出生ノトキ五百ノ霊瑞レイズイ

　三、五百ノ婆羅バラ門悉達太子ノ相サウヲ占知ウラナヒシルノ弁述

　四、阿私陀アシダ五通力ツウリキヲ以テ浄飯王宮ジャウボンワウグウニ来ルノ由縁

　五、阿私陀悉達ノ相サウヲ占ウラナフノ妙術メウジュツ

　六、摩耶マヤ悉達ヲ生ジ玉ヒテ七日ニ命終シ玉フ 太子逆罪キャクザイニアラザルノ述（仏本行経ノ意コヽロニヨルニ…、普曜フヨウ経・大善権ゼンコン経・長阿含アゴン経等ノ大旨之ニ同ジ）

　七、憍曇弥ケウドンミ太子の養母ヤウモタル事

　八、悉達俗書ゾクショヲエラベルノ述

　九、悉達五明メイニ達セルノ事実ジジツ

　十、釈氏諸眷属ケンゾクノ捔力カクリキ

　十一、忉利トウリノ箭塔センタフ

　十二、悉達灌頂クワンヂャウノ式シキ

　十三、太子遊覧イウランノ境キャウ并ニ慈愛ジアイノ観念

　十四、太子還御クワンギョシテ発心ホッシンノ相

　十五、娉妻ヘイサイノ相

　十六、宮キウ中色味シキミノ式

　十七、太子東園トウヱンノ出遊シュツイウ

　十八、老者ラウシャノ相

　十九、南園ナンヱンノ出遊

　二十、病状ビャウジャウノ沙汰サタ

　廿一、優陀夷ウダイ太子ニ朋友ホウイウトナリテ諫言カンゲンシ玉フノ弁

　廿二、西園サイヱンノ出遊ノ清道セイダウ^５

　廿三、浄居ジャウゴ天化ケシテ死人トナルノ術

　廿四、優陀夷ニ太子死相シサウヲ問トヒ玉フ弁

　廿五、太子無常ムジャウノ観念クワンネン

　廿六、優陀夷朋友ホウイウノ三要ヨウ

　廿七、優陀夷死人ニ相逢アヒアフノ所以ユヘヲ述

　廿八、大王太子ニ出家ヲ許ユルシ玉フ説

　廿九、北園ホクヱンノ出遊

　三十、化人ケニン出家ノ功徳ヲ申ノブ

　卅一、大王優陀夷ニ北遊ノ式法シキホフヲ問ヒ玉フ事

　卅二、大王耶輸多羅ヤユタラノ勅命チョクメイ

　卅三、太子大王ニ出家ヲ望ノゾメルノ弁

　卅四、相師サウシ太子ヲ占ウラナフノ説

　卅五、太子王宮ワウグウヲ出玉フノ神変ジンペン

　卅六、耶輸多羅ノ三夢ム

　卅七、太子車匿ガモトニ行ユキ白馬ヲ乞求コヒモトメ玉フノ述

　卅八、太子王宮ヲ出イデ玉フノ現瑞ゲンズイ

　卅九、車匿シャノクヲカヘシ玉フノ説

　四十、車匿仏ニ諫言問対カンゲンモンタイ

　四十一、太子所具ショグノ物一一車匿ニカヘシオクリ玉フ事

　四十二、太子剃髪テイハツノ誓願セイグワン

　四十三、太子猟レウ人【注：「猟人」の下にルビ「カリウド」】ノ衣体エタイヲカヘ玉フノ術

 

　釈迦一代記巻四目次

　一、太子苦行林クギャウリンニ到イタリ玉フノ縁

　二、跋伽バツカト太子ト邪正ジャシャウノ議論ギロン

　三、車匿王宮シャノクワウグウニ還カヘリ浄飯王太子入山ノ相サウヲ聞キヽテ哀歎アイタンシ玉フ情ジャウ

　四、王師ト大臣ト太子入山ヲ尋求ジングスルノ弁

　五、二使シ太子ニ尋逢タヅネアフノ説

　六、太子二使ノ語領納リャウナウセザル述

　七、太子王舎城ニ到玉フ縁

　八、太子槃荼婆山ハンダバセンニ入玉フ頻婆娑羅ビンバシャラ同ク入テ太子ニ諫言カンゲンノ説

　九、太子二仙センニ逢アヒ玉フノ縁

　十、仙人太子ニ己オノレガ法ヲ談ダンズルノ弁

　十一、太子仙法ヲ捨ステ玉フノ要述ヨウジュツ

　十二、太子入山ノ学道

　十三、二使シ山ヨリ還カヘリ大王ニ陳白チンビャクスル弁

　十四、大王太子ニ資具シグヲ送オクリ玉フノ説

　十五、菩薩ノ楽行ラクギャウ

　十六、外道ゲダウノ苦行クギャウ

　十七、太子洗濯池センダクチノ説

　十八、二女太子ニ乳糜ニウビヲ奉ルノ縁

　十九、十二年修行シュギャウノ弁述

　二十、乳糜ニウビの名状ミャウジャウ（仏本行経の意ニヨルニ…）

　廿一、乳糜製方ニウビセイハウノ神変ジンヘン

　廿二、村主ソンシュ女菩薩ニ糜粥ビシュクヲ献ズ（已上仏本行経ノコヽロ、法苑珠林ニ引ケリ）

　廿三、五人ノ新属シンゾク菩薩奉事ブジノ相サウ

　廿四、菩提樹ボダイジュノ相并ニ四種不可思議シュフカシギノ弁述

　廿五、菩薩菩提樹下ニ到イタリ玉フ相

　廿六、菩薩樹下ニ到リ玉フ霊瑞レイズイ

　廿七、長寿竜チャウジュリウ三仏ブツノ成道ジャウダウヲ知シル相

　廿八、吉利施草キチリセサウノ述（已上仏本行経・三世因果経ノコヽロナリ）

　（後編に続く）

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　１　北条秀雄『新修浅井了意』笠間書院、1974年、pp.138-142

　２　刊記には２種ある。

　　　https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/bunko31/bunko31_e0979/index.html

　　　跋に「延宝五□令月丁巳／□□南□光富□□玄貞子□言」が見える（読めない字を□とした。ご教示を希う）。

　　　刊記は「延寳六戌午年初秋上旬丁子屋三郎兵衛板行之」

　　　https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ha05/ha05_03713/index.html.

　　　「延寳六【戌午】年初秋上旬五条橋通塩竈町／丁子屋長兵衛開板」とある。

　　　前者の跋と刊記が後者で消された跡があるので、前者が本来のものであろう。1678年・京都の開板である。

　３　http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_B_200008436

　４　https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/200008436/viewer/１

　５　十冊本ではここから三之末に所載。

◆プロフィール◆

岩井　昌悟（いわい　しょうご） （1969年生）

　　千葉県出身。東洋大文学部教授。東洋大大学院文学研究科修了。博士（文学）。専攻は仏教学。著書に『現代仏教塾』（共著・幻冬舎）、『近代化と伝統の間― 明治期の人間観と世界観』（共著・教育評論社）など。

（『CANDANA』282号より）